第37章 惑溺
マグロになった俺の口の中を開き、歯列を舌でなぞってくる。
「はぁ…っ…ん」
歯の神経は敏感に反応して目を開けながら様子を見ていると、深く…浅く…啄みを繰り返される。
「はぁ、ふ……っは、んう…」
利用されてもいいと思った。
主任が頼れるのが俺のような人間しかいなくて助けてあげたかった。
けどこのキスはあまりにも狂喜すぎる。
気持ち良すぎて動かないどころか動けない。
下半身が悦んだようにピクッ、ピクンッと反応して、異物がガチガチに腫れ上がってくる。
「少しは抵抗しろ…」
「何も…聞くなって…、仰ったじゃないですか…」
擦れかかった声。
「俺が…直属の上司だからか?」
無造作な濡れた髪。
「俺が…男だからか?」
火傷するほど熱い眼。
「長瀬より…俺が、好きか?」
「……、」
主任はなんて優しい人なんだ。
一番苦しいのは主任のはずなのに俺なんかの心配をする。
この人を守ってあげたい。
この人の笑顔を守りたい。
「媚薬…盛られたんですよね。…いいですよ。俺の身体…好きに使ってください」
「長瀬のことも聞かないし、答えたくないってか」
「俺が男に抱かれて悦ぶのは、本当のことですから」
主任は顔を歪めて俺の熱を貪るように上着を脱がしてきた。
加減したように噛みついてきて俺の心をくすぐるように……
「男の抱き方なんて知らねぇからな」
「存じてます」
この人を受け止めたい。
いま俺にしかできないことを精一杯してあげたくて背中に腕を回した。