第35章 美容院
昼食になってから
オシャレな洋食店に入店。
夜遅くに帰らせたこと、
贅沢な昼食、
目の前にイケメン上司がいる緊張感に
料理を口に運んでいるのかも微妙なこの頃。
「上司相手じゃ緊張するか?」
「えっ」
鋭い洞察力で指摘される。
声も暗いし
表情も出にくいと思っているから
指摘されると言葉に詰まる。
それなのにこの人は
熱をこじらせて
弱ってた俺のことを持ち出してきて、
気恥ずかしいのに
なんだが…
心の中がムズ痒くなる。
「ランチタイムなんだからリラックスして過ごせ。
そんなんじゃ、
俺も意識して気を緩められないだろ?」
この人にとっては
人との距離の取り方が容易いことでも
俺にとっては
何重もの殻を被っている。
だから意識してしまうのは
何のことはない。
俺がこの人の目に止まっているのは
何かしら理由がある。
俺は
転社してきた
信用もできない
人間関係をこじらせて
熱出してぶっ倒れた
暗い部下に過ぎないのだから。