第34章 訪問者
牛垣主任の自慢の息子さんは
佑都くんというらしい。
いちばんお気に入りと思われる
写真を見せてくれ、
大きな口を開けてカレーライスを頬張ろうとしている。
「休日の日、佑都といっしょに
カレーライスを作ったんだ。
そのときの写真」
「かわいいですね」
「ニンジンは自分でむいて
型抜きを使ったんだ。
そしたら型抜くのにハマってしまって
ジャガイモまでやろうとしたから
流石にそれは止めさせた」
「はは…。それは大変でしたね」
その時のことを楽しそうに教えてくれる。
ままごとも遊びだと思ったらトコトン遊ぶ。
子どもはご飯の時間なんて
特に考えないのだろう。
それにしても6歳の男の子が
料理のお手伝いができるなんて
立派だと思う。
牛垣主任がそうやって躾けたのだろうか?
そうでなくても
この写真を撮った時の牛垣主任は
さそがし幸せそうな顔をしていたのだと思う。
休日の時間に
子どもと一緒にカレーを作って
いっしょに食べて、
子どもにこんな顔をさせるくらい
愛情を注いでるんだって沁みるほど伝わってくる。
この人に隙なんてない。
こんなに満たされた顔をしているんだから。
「主任って…最初見たとき
冷たい人かと思ったんですけど。
でも違いました。
仕事できて…部下想いですし…、
奥さんも、
息子さんも大事にされていて、
本当に、出来た人だなって
……尊敬します」
この人を幸せを
邪魔する人がいるなら
許せないと思った。
元芸能人だからとか関係なく。
俺にこんなに優してくれる頼れる上司。
この人が好きだと気付いたけど
これは恋愛感情じゃない。
尊敬の意味で、俺は牛垣主任を好きになったんだ。