第34章 訪問者
時折、髪を撫でられたような
感覚を覚えながら
心地のよい眠りにつく。
「……ん」
「?あぁ、起きたか…。
飲みもの飲むか?」
薄暗い部屋でブルーライトの光りを感じ、
牛垣主任はどうやら
携帯を触っていたようだ。
飲み物を持ってきてくれた
スポーツドリンクをただ渡すのではなくて
抱えて起こしてくれ、
口元まで運んでくれる優しさ。
(こんな手厚い看護されたら
一発で落ちるだろうなぁ……)
ただでさえ顔がいい。
それに加えこの面倒見のよさ。
俺はただの
1ヵ月程度しか一緒に仕事をしていない
信用もされてない部下なのに、
ここまで良くしてくれてる。
色々聞きたいことはあったけど
額にしっとりとした手が添えられた。
「だいぶ顔色良くなったな。
身体の熱も引いてきてる気がする」
「飯…食った、おかげです。
ありがとうございました」
牛垣主任の手は俺の予想に反し、
温かい手の持ち主だった。
長瀬も牛垣主任とおんなじ。
思い出して切なくなるのに、
好感が持てるような暖かみがあって
それでいて、
うっとりと目を瞑ってしまいそうになる。
汗ばんだ服をまた着替えさせてくれ、
牛垣主任は
小まめな性格なんだろうと思った。
几帳面だし
細かいダメ出しもしてくるし、
机のまわりはいつも片付いている。
典型的なA型だな…と思った。
本当のところは知らないけど。
(そういえば……いま何時だ?)
外はもう真っ暗。
かなりぐっすり熟睡してた気がするから
深夜近くになっている頃かもしれない。
この人、家は大丈夫なんだろうか。