• テキストサイズ

【R18】Querer【創作BL】

第34章 訪問者





一度だけ来てくれた授業参観日があった。

正直いって小1の時だったから
あんまり思い出せない。
正確には
思い出したくないのかもしれない。



子どもながらに
気恥ずかしい思いをした。

保育園の出し物にも来てくれなかった
母親がわざわざ俺のために
足を向けてくれたのだ。

なんだか落ち着かない気分がして
次の問題を答えたら
母はどんな顔をするのだろうって
張り切って手をあげた。





正解する自信があった。

テストの点数も
100点をたくさん獲っていたからだ。

先生にあてられて答えを口にすると
「正解!よくできました~」と
いつもより盛大に褒めてくれる。





みんなの前で発表して正解した。
大きな声も出せた。
母もきっと俺の成長を喜んでいるだろう。

勢いよく後ろに振り返ったら、
そこにいた姿は消えていた。



不自然に空いた親同士の間隔。



俺の錯覚だったのだろうか。
いや間違いなくそこにいた。
本当にそうだったか?

母の隣りにいた誰かの母親と目が合うと
申し訳なさそうな顔をして察した。










親は俺に無関心。

仕事がなによりも大切な命。










あの人たちはずっと俺に対して
薄情な態度で接してきた。

だから忘れていた。



あの人たちが優しくしてくれた出来事。
ささやか過ぎて忘れていた。





小学生高学年の時だったか。

数日間続く高熱。
もしかしてこのまま憔悴して
死ぬんじゃないかって
走馬灯が見えかけた時だった。



気付いたらいつも寝ている
見慣れた自分の部屋ではなくて、
ここが病院だと分かると両親の顔があった。

呆れられて怒られもして、
なまぬるいゼリーを食べさせてもらった。





たったそれだけのこと。



口が聞けるようになったら
いつも通りの関係になったけど。


/ 727ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp