第34章 訪問者
実家でも居留守が基本。
「どちらさま…でしょうか…」
それに一番の原因は
熱さと悪寒で判断力が鈍っていて、
テレビドアホンの機能が
分からなくなってしまった。
黙っていればいいものを声を出してしまう。
『おい大丈夫か?
俺だ、牛垣だ。戸を開けろ』
「……え…?」
ものすごく良い声が聞こえた。
慌ててモニターを食い入るように見ると
そこにはものすごく
顔の良い男が映っていた。
牛垣主任だ。
でもなんで俺の家に?
『見舞いにきてやった。
早くしろ。
玄関の鍵も開けておけよ』
突然の訪問者に呆然としながらも
解錠ボタンを押し、
足は自然と玄関の方に向かう。
玄関の鍵を開けてふと気づく。
「こんな、だらしない格好……」
幻滅される。
それ以前に幻も見てないだろうけど
ただでさえ冴えない格好悪いのに
イメージダウンされたくない。
格好だけじゃない。
汗臭さも気になる。
部屋の中も散らかったままだし
片付けなければと
急いで戻ろうとしたら、
「う゛ッ……」
何もないところで躓いた。