第34章 訪問者
自宅に帰ってから
映画の続きを見ようと思った。
ケンジとセドリックをみたら
元気になれると思ったからだ。
不運な俺にも
幸せが待ってるんじゃないかって。
この命尽きる前に、
二人から幸せを分けてもらえるんじゃないかって。
もちろん安静にする気はある。
「寒い……」
だが現実はそう上手くいかないもので
ゾワゾワ襲ってくる悪寒。
悪化したのか関節が痛い。
電車に揺られ、
自宅が近付くにつれひどくなる。
目が開けられないほど
意識が後ろへと持って行かれそうだ。
水を飲んで最後の力を振り絞り、
脱ぎっぱなしのスエットに着替え倒れ込む。
もう何もしたくない……
力尽きた……
考える間もなく、
まどろみの中に沈んでいった。