第34章 訪問者
解熱剤が効いてきたのだろう。
頭痛だけでなく、
倦怠感も楽になってきた。
自分の席に着くとパソコンを起動させ、
いつものように時間を潰そうと
考えていると…
「おい角。風邪か?」と
少しトーンを落とした牛垣主任が
近くまで来ていた。
不謹慎だが映画のシーンがよみがえった。
襟足はあと数センチほしい。
前髪はオールバックを下ろせば、
ケンジと同じくらいの
長めの丁度いい長さになる。
高潔な牛垣主任は
自らセドリックの逞しい腰にまたがって、
色んな角度から感じて…と腰を揺らす。
濃厚で絡み付くようなキスシーン。
息を吐き出すタイミング。
髪を撫でる愛情表現。
唇を合わせるたびに高まるムード。
高調していく二人のリズム。
数あるゲイ動画よりもエロさがあった。
エロいっていう表現より、
艶があるというか
色っぽいというか
つまり格の違う。
どちらも演じるプロだから
無知な俺が上手い下手と
格付けするのも無礼な話だが、
これがアカデミー俳優の底力なのかって思った。
刑務所に来た時のやつれ感。
視線の動き、
緊張感、
痛々しいところとか
妙にリアルに喘いでいて、
だんだん気持ち良くなっていく声をあげる。
だから本当は挿入ってるんじゃないかって
くらい想像を掻き立てる。
そうでなくても
男とリアルに経験があるのか?って
うわさが立ってもおかしくない演技。