第34章 訪問者
──…
またもや牛垣主任に魅入ってしまった。
かれこれ2時間ほどの大傑作。
余韻に浸かると
何度も泣けてきてしまう。
それが運の付きだった
と言わんばかりに体調を崩す。
もっと言うなら、いつ寝たかも記憶がない。
「風邪薬あったかな……」
病院は最終手段。
頭痛薬かなにかあったような気がして
引き出しを確認すると
解熱効果もある錠剤をみつけた。
とてもじゃないが
情けなくてこんな理由で休めない。
……頭イタイ。
鼻水トマラナイ。
寒気スル。
雪崩のように出てくる鼻水をかみ、
山積みになったゴミ箱に入れる。
いっておくがこのティッシュの山は
シコった残骸ではない。
感動の結晶だ。
牛垣主任が語学堪能というのは
あのときの主題歌を耳にしていたから
差ほど驚きはしなかった。
あちら版だったから
日本人には聞き取りにくい発音もいくつかあった。
途中から出てきたスペイン語を牛垣主任が
流暢に話すあたり、
さすがだと思ってしまった。
主任は合衆国出身もしくは滞在していたのだろうか。
あの端整な顔立ちも異国の血が入っているなら
尚更そう思ってしまう。
初見は字幕あり吹き替えなしでみたが
日本語吹き替え版もあるらしい。
それに日本では放映が難しそうだ。
際どいカメラワーク。
それに何より
セックスシーンが濃厚すぎだ。
しかも本人がアフレコしている
とのことなので
一体どんな気持ちで、もう一度……
意味深に考えてしまう。
「あっ……電車!」
そろそろ出社しないと遅刻することに気づき、
慌てて家を飛び出したのであった。