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【R18】Querer【創作BL】

第33章 𝐋‌𝐎‌𝐂‌𝐔‌𝐒 *





自分の気持ちに嘘はつきたくない。

エリックが無事なのは手紙で知った。
それで十分なら律儀に会いになんて来ない。

ケンジは写真立てを奪い
机に置いて、
正面からエリックの前に立った。





「こっちを見てくれ。エリック」


「………駄目だ」


「エリック」





手紙を書いたのも
小さな嘘をついたのも
すべては自分を守るためだった。
利用されたと被害妄想はここまでにしよう。

エリックは不器用な男なのだ。

失う悲しみを知っているから
愛することを誰よりも恐れている。





「やっとこっち見た」


「……ケンジ。俺を困らすな」


「お前がここに呼んだんだろ?
俺にして欲しいことがあるから手紙を書いた。
そうだろう?」





エリックの分厚い胸から
鎖骨のあたりをそっと撫で上げる。

怯んだように一歩ずつ後ろに下がる。

触れた体温は熱い。
最後まではしていないが
ベッドの上で抱き締め合ったことを思い出す。





「言えよ。何でもしてやる」


「義務ならいらない」


「義務じゃなけりゃ貰ってくれるんだな」


「そうは言ってない」


「そう言ってる。
この俺がここまでしてるんだ。
自分からするのは…初めてなんだぞ」


「お前は違う。
お前は…、ゲイじゃない」





ケンジは誘惑するように
エリックの上に馬乗りになっていた。

どうしても性癖という壁があるようだ。





「確かに俺はゲイじゃない。
自分の身を守るため
間違った気を起こしてなければな」


「だったら尚更だ。
お前は女と結婚した方が幸せになれる」


「そうかも知れない。
自分の子供をみるのも一種の幸せかもしれない。

けど俺をこんな風にさせたのは誰だ…?
俺の気持ちを受け取ってもいないのに
蔑ろにするなよ」





更なる追い打ちをかけるように
エリックの繊細な髪を撫で、
唇を寄せた。


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