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【R18】Querer【創作BL】

第33章 𝐋‌𝐎‌𝐂‌𝐔‌𝐒 *







「……眠れないのか?」


「え、あぁ……喉乾いちゃって。
部屋…入ってもいい?」


「ああ…」





ここが誰の部屋なのかは分からない。

念のため断りを入れると
エリックは大切そうに握る写真に
視線を元に戻す。

隠さないところをみると
触れていい話なのだろうと思った。





「それは?」


「家族と撮った数少ない写真だ。
……左前がカイマン
その後ろがラッシュ、
手前に映っているのがショーだ」


「みんな楽しそうだな」





軍人だとは思えない休日を楽しむ姿。

あそこのバルコニーで
肉や酒瓶を掲げており、
バーベキューを楽しんでいるのだろう。
ラッシュとカイマンは体格が良く
愉快な表情をしている。

カメラ撮影したと思われるショーの奥には
薄っすら微笑んだエリックの姿。
髪が短くて初々しい。

ショーは甘い目もとの美形男子だった。
ライトブラウンの髪色。
ショートパーマをアップバングした髪型。
エリックが一目で惚れたと
頷けるいい男だと思った。





「もうすぐ四年経つ」


「お墓はここにあるの?」


「いや。俺とは違って
あいつらには待っている家族がいる。
……何も埋まってないけどな」





皮肉にも聞こえた。

自分が生き延びるためには
亡骸を捨てなければならない状況下に
あったのだろう。

エリックは海底から這い上がって
途轍もなく悔いたはずだ。
それでも命を燃やして立ち続けている。



エリックのなかには今、なにが残っている?
壊しそうで触れるのが怖い。
だけど。





「お前が居てくれたから
俺は今こうして笑って生きてるんだ。

お前が居なかったら
きっと俺は
アイツらに食い散らかされてた。
無駄に抵抗して
死んでいたかもしれない。
ありがとう」


「感謝されることなんてしてない」


「俺にとってお前は大切な存在だよ。
あの時も言ったけど今でもそうだ。
お前の幸せを心から願っている。

だから俺はここに来た」


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