第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
エリックが仲間たちと金を出しあって買った
ビーチハウスは
とても眺めの良いところだった。
外にはバーベキューができそうなバルコニー。
目の前にはオーシャンビューが広がり、
空き部屋からも海がみえるところを
用意してくれた。
「いいなぁ。
俺のこんなところに住んでみたい」
「ハリケーンが来たら大変なんだぞ。
保険が全く効かない」
「そう思えば確かに。
ここって直撃する場所だよな」
「気象予報では
明後日まで晴れ予報だけどな。
欠航便が出るから気をつけろよ」
「だな。早めに帰るよ」
朝の便は何時からだろう。
何ともないフリをしているが辛い。
何気ない一言で傷付けてしまいそうで怖い。
ケンジは携帯画面を操作して
飛行機を確認する。
(浮かれて2週間も休暇届出すなんて
ほんと自分に呆れるよ……)
人の気持ちに気付くのが鈍いと
言われたことを思い出す。
迷惑だなんてひとつも考えなかった。
考え出すとネガティブな方向へ
どんどんと流れ出す。
夕食はエリックが手料理を振舞ってくれた。
お酒を口にして
中身のないことを喋って、
ほろ酔い気分でシャワーを浴びて
早めに寝床につくことにする。
(眠れない……)
休みたいのに神経が高ぶって
目を覚ましてしまう。
何度も寝返りを打つ。
喉を潤せば眠れるだろうかと
寝床を出ることにし、
扉が開いた
階段手前の部屋で人影を感じ足を止めた。
(写真……?)
エリックは動かなくなった石像のように
写真立てを手に持ち見詰めている。
ケンジは踏み出そうか迷った。
しかし足を踏み出す前に
古いビーチハウスの床がギシッと軋み、
エリックの首がゆっくりとこちらに振り返った。