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【R18】Querer【創作BL】

第33章 𝐋‌𝐎‌𝐂‌𝐔‌𝐒 *





海底で奴を始末し、
死体を回収したかのように思えた。

最年少のエリックだけ
操縦室に残され、
通信でその様子を伺っていた。

しかしN.N.は再び息を蒸し返してしまったのだ。



異変に気付いたエリックは
最後の家族や恋人の残影を耳にする。

船は操縦不能となりメインシステムをやられた。

脱出するためのゲートを開くと
海底の水で溢れ返り、
エリックは仲間に声をかけ続け
「逃げろ」という最後のメッセージを無視して
三体の破片を目にする。





「みんな魚みたいに泳いでいた。
ラッシュの胴体…
カイマンの頭部…
ショーの、指輪をつけていた左腕…

さっきまで生きていた奴らが
見事なまで自由に泳いでたんだ」


「っ……」





息をすることさえ忘れただろう。
危険を承知だとはいえ
原形を留めていない形を目にしてしまった。

家族を失い
愛した者を失った。

行き先のない悲しみ。





「その瞬間俺は
こいつらと、
ずっと一緒に過ごそうと決めた」





エリックは諦めたように浅く笑った。

エリックにとってかけがえのない存在。
自分の命よりも大切な大きな存在。
それが彼らだった。

楽しく過ごした思い出の日々が
走馬灯のように駆け巡り、
一人で生きるには辛すぎることを物語った
悲しき瞳の色。





一度命を捨てようとした。
だがエリックはまだ生きている。

復讐という憎しみや怒りを肥やして。





「復讐は遂げたのか……?」


「……ああ。
おかげで俺の手で
奴を殺すことができたよ」





セドリックは乾いた笑みを零した。

燃やし続けた無念を晴らしたというのに
なにか引っかかったような面影。



復讐なんてするもんじゃない。

殺したところで何も帰ってこない。





仲間との思い出の場所に帰ってきて
エリックは何を思ったのだろう。


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