第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
突然ケンジが現れたというのに
何も聞かなければ物怖じしない態度。
仕方なくケンジの方から口を開いた。
「元気そうでよかった」
「ああ」
「ずっと心配してた」
「ああ」
「ちゃんと飯食べてるか?」
「ああ」
「その……俺が来て迷惑だったか?」
「……いや。
お前の声が聞けて嬉しい」
「同じこと言ったら、
飛び膝蹴りしようと思ったのに」
「見ないうちに凶暴になったな」
「誰のせいだよ」
セドリックと別れたあの日、
騒動が鎮圧してから死者・重軽傷者複数。
行方不明者は2名。
囚人であるセドリック・リプソン。
看守であるデイジー・グリーン・ギルダ
の名前がニュースでは取り上げられず
監房内のみであがったのだ。
囚人たちは噂した。
あの二人は逃避行したんだと。
でもケンジは違うと確信していた。
「あれからすぐ
ウォーカーが亡くなったんだ。
みんなに見守られながら
安らかな顔をしていた。
俺が知っている人たちは
怪我はしてたけど
生きていてくれた。
それは本当によかったと思う。
俺もすぐ出ることになって
真犯人が見つかったんだ。
予想外の相手で驚いてしまったけど」
「誰だったんだ?」
「チェイスのことが好きだった
メリッサっていう女の子だった。
チェイスと仲良くする俺のことが
気に食わなかったらしい」
「八つ当たりも良いところだ。
チェイスの……
両親とは会ったのか?」
「ああ……うん」
チェイスの想いは
セドリックにしたら良い気分はしないだろう。
自分だったらそう思うからだ。
ケンジは素直に言うべきか唇を締めた。