第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
誰が来るんだろうとドキドキしていたら
下の階になったのは
横の監房だったセドリック。
「上にあがるの大変じゃないか?
下を使っていいぞ」
「俺は子供じゃない」
「傷の心配をしたんだ。
どうする?」
「じゃあ…変わってほしい」
階段がないため
鉄格子のところに足を引っ掛けて
上のベッドにあがるのだ。
これが結構尻にきた。
下のベッドに座ると
まだ話したいことがあるのか
セドリックは横に腰を下ろしてきた。
「疑ってごめん」
「別に気にしてない」
「嘘だ。本当は怒ってるんだろ」
「怒ってない」
「あからさまに避けてたんだぞ」
「俺は平気で人を殺せるからな」
「そうじゃない。
お前のことが怖いって思ったけど
そういうことじゃなくて……。
お前が誰かを傷つけるたび
お前が俺から離れていくような気がして。
それがどうしようもなく怖かったんだ」
法律がない刑務所だとはいえ
殺人罪が問われれば
処罰が下る。
刑期が伸びるほか
長い期間懲罰房に入れられて、
もっと厳重なところに護送される可能性もあった。
しかし、
セドリックの場合は
そんな単純なことじゃないような気がしたのだ。
「セドリック、教えてくれ。
お前は何をしたんだ?」
「………」
「お前のこと知りたいのに
何にも知らないんだ」
セドリック・リプソン。
元軍人の24歳。
半年前にここに来た罪人。
嫌いなものはミックスベジタブルの冷凍人参。
バスケは色々なポジションをやっていた。
キスが上手で
あそこがでっかい。
クールで無愛想なのに
弱っている奴には優しくて
デイジーとの今後の関係も気になる男。
「俺だってお前のことを知らない」
「教えただろ。
大学も家族もいるって」
「罪状は?」
「免罪」
「だと思った」
「信じてくれるのか?」
「罪人にしては綺麗すぎる。
お前はすぐ出られるさ」
そう言ってセドリックは
ケンジの頬を優しく撫でてきた。