第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
幸い骨折もなく、
レントゲンでも骨に異常はなかった。
ひどい腫れも肛門の痛みも引いてきて
2日目には
室内だけ歩き回ることを許され
昨晩、ロックインしたことを知る。
「なんてこった……」
ケンジが医務室で寝ていた時、
殺人事件が起こった。
24時間にわたり囚人たちは閉じ込められたが
セドリックは普通に顔を出していた。
いつも通りの顔だった。
遺体となって発見されたのは
ケンジを襲った
コーギー・マクミラン。31歳。
犯人は捕まってない。
鉄パイプで頭をグサグサに刺され、
凶器となった鉄パイプが
直腸を突き破った
凄惨な状態で発見された。
ケンジはトレイシーに
「身に覚えはないか?」と聞かれ
監房内の状況を知ったのだ。
「なんで。どうして……っ」
セドリックは普通の顔をしていた。
いつも通りの青い瞳をして。
眠ったらお腹が減ったので
朝食を食べて
「気分は悪くないか?」
と髪を撫でられた。
あの時、静かに零した
言葉を思い出す。
──お前の代わりに報復してやる。
「どうして……」
殺すなと言ったのに
コーギーを殺してしまった。
見るに堪えない姿になって
生きたまま
グサグサに刺され
何度も何度も痛めつけて
報復されたように命を落としていった。
その日からケンジは亀裂が走ったように
セドリックと
まともに目を合わせることが
出来なくなってしまった。