第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
(……誰も、来ないよな……?)
タオルケットの中にそっと滑らせ
盛り上がる角の部分。
布団のなかで擦れば
万が一、
誰かが急に入ってきても誤魔化せられる。
「…ふ……ぅ」
どうしてだろう。
性欲は淡白だったはずなのに
弄られた肛門が異様に疼き、
半分硬くなった妄想のかたまりが
服の下で窮屈そうに持ちあがっていく。
動かした手は止まらなくて
扉に背を向けて
じかに触れると嗚呼が漏れそうになった。
「っはぁ……ぁ゛……」
一人の病室で背徳感のある自慰行為。
いけないことだと分かっていながら
動かした手は
登り詰めていく頂上に辿り着きたいと
何度も何度も擦り合わせる。
「セド、リッ…ク……っ」
唇に手の甲を寄せると思い出す。
セドリックの柔らかな唇。
獣のような息遣い。
温かく包み込む大きな手のひら。
優しく見つめてくる吸い込まれそうな青い瞳。
「っく、……はぁ…っ゛」
もうすぐイける。
加速していく
止められない手を必死に動かす。
目を閉じて意識すると
包み込んできた手のぬくもりに
触られている気になって、
興奮して止まない浅い息継ぎを繰り返す。
「ぁ……も゛…だめ、んンっ、セドリッ……──」
背後で大きな音が鳴ってビクッと縮こまる。
大きな音といっても
強く打ちつけるような音ではない。
静かすぎる部屋だから扉が開く音が際立っただけ。
「──……セド、リック」
湿り気の帯びた目元で振り返ると
目を見開いたセドリックが
何も言わず覆い被さってきた。