第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
まさかこんな美人に
恋のライバル宣言のようなものを感じ
顔には出さなかったが苦笑いものだ。
「セドリックとはそういう関係じゃないよ。
俺は新入りだし、喧嘩も強くない。
ギャングにもなりたくなかった。
セドリックの噂を聞いて
近付いただけだ」
「トロールを倒したって話ね。
彼も同じ尻を狙われた者同士だから
安全だと思ったの?」
「安全というか、
そもそも相手にされてない。
今回は俺の不注意だった」
血液検査で
過量の向精神薬が検出されたと
トレイシーは教えてくれた。
おそらくあのカップケーキに仕込まれた。
「ケンジはお人よしね。
自分に責任を感じなくてもいいのに」
「周りからどんな目で見られようが
耐えてみせる。
俺がその気になれば人だって殺せる」
「そうね。善人といわれる人たちは
見て見ぬふりして
平然と人を殺せるんだから」
「…?」
「うふふ。こっちの話し。
長話しているところ
セドリックに見られたら嫉妬させちゃうわね。
ここは男前が多いから迷っちゃうわ。
またね」
「………」
デイジーが部屋を出ていき
一瞬だけれど妙な空気を感じた。
思想や政治的な意図をもって行う
殺人を肯定するような表現。
笑って誤魔化されたが
セドリックとは違う闇の部分を感じてしまう。
「セドリック……」
セドリックは
デイジーのことをどう思っているのだろう。
お似合いの美男美女。
距離を図りかねているだろうけど
女性がいない禁欲生活。
「……、」
セドリックの興奮した股間を思い出し
急に下半身が熱くなった。