第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
最後は手の甲に王子様キスをされると
チラッと視線を上げてきて
男同士なのにドキッとしてしまう。
「ケンジ。殺してほしい奴が
いるなら俺に言え」
「はっ??」
甘い雰囲気から飛び出した復讐宣言。
ケンジの思考は秒で止まる。
「俺の手は他人の血で汚れているから
お前は何も気負わなくていい」
「セドリック。
何を急に言い出すんだ?」
「俺はそいつを痛めつけたところで
何も心は痛まない。
ここには奴らを裁く法律がない。
やられたらやり返す
倍返しにしてやる。
お前の代わりに報復してやる。
お前はただ一言俺に頼めばいい。
俺はお前が味合わされた痛みを何倍にもして…──」
「よせ。俺は平気だから……っ」
「お前は見た目以上にプライドの高い男だ。
お前は無理やりレイプされて傷付いた。
そいつのことを殺したいほど憎い
そうだろう?
そんな奴がいつまでも
この刑務所にいるんだぞ?
俺のことは心配するな。
俺はお前を守れなくて悔しいんだ。
だから頼め。
アイツを殺せと。コーギーを殺してくれと」
「………っ」
セドリックの瞳が牙を剥くように鋭く光った。
澄んでいた青い瞳は今まで何を見てきたのか。
あの温かい手は一体
何を握り締めてきたのか。
セドリックが恐い。
これ以上聞きたくない。
これ以上言わせては駄目だ。
もう泣かないつもりだったのに涙が溢れてきた。