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【R18】Querer【創作BL】

第33章 𝐋‌𝐎‌𝐂‌𝐔‌𝐒 *





部屋の中は静かになった。

ケンジは気まずくならないように
先に口を開いた。





「俺、何分くらい気を失ってた?」


「運ばれてから時間は経ってない。
司書がみつけて看守を呼んだんだ」


「そうか。
まだ頭がボーっとするけど」


「きっと点滴のせいだ」


「ああ、確かに。
精神安定剤が投与されるなんて
夢にも思わなかった」





点滴のラベルをみて
ケンジは苦笑いして頷き返した。

いつもの調子で元気な姿を見せると
張り詰めた空気が
ほんの少しだけ和らいでいく。





「もうすぐ飯の時間だがどうする?
食べれるか?」


「ブライアンみたいに
食べさせてくれるのか?」


「お前がそうしてくれって言うなら」


「………いや、やめとく。
手は問題なく動かせる」


「遠慮するなよ」


「遠慮はしてない。
っ……馬鹿よなぁ、俺って……。
もっと慎重に行動しなきゃならなかったのに。
ここが、監獄だってこと…っ」





忘れていた。

優しい場所があったから油断してしまった。
一度だけじゃない。
二度も三度も
過ちを犯した凶悪犯や長期受刑者。

ここには落ち着ける場所なんてない。
すべて自分が招いた過ちだ。





「自分を責めるなケンジ。
お前は何も悪くない。
悪いのはお前を襲った犯人だけだ」


「違う。俺は馬鹿なんだよ。
自分の立場が分かってないから
こんなことになったんだろ…!!」


「ケンジ……」


「触るなよっ…!!
俺は汚いんだ。

あいつらに、……何度も…ッ」





精神安定剤が入っているのに
どうしようもなく
気持ちが乱れていった。


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