第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
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──…
いつの間に気を失っていて
目覚めると
見覚えのある医務室で横になっていた。
頭にはガーゼが巻かれ
腕には点滴が固定されている。
(そうか。俺は……)
生きていたのか。
「気が付いたか?」
「……セドリック」
点滴棒から視線を下へ向けると
椅子に座っていたセドリックが
額に手を伸ばしてきた。
「運ばれた時の記憶はあるか?」
「ところどころ断片的だけど」
「指は何本みえる?」
「1本。目がふたつに
鼻と口がひとつの男前だ」
「冗談が言えるならいい。
頭に違和感はあるか?」
「ない。
……ざまあないな。
セドリックもそう思うだろ」
「思ってない」
「…?」
「ケンジ。お前に一つ確認したい。
お前を襲ったのは
コーギーひとりか…?」
青い瞳は静かに問いただしてくる。
口を開きかけたその時、
扉をノックする音が聞こえて
看守部長のトレイシーがやって来た。
「意識はどうだ?」
「問題ないが
短くしてやってくれ」
「ケンジ・ニイヤマ、これから質問する。
答えたくなければ
首を振ってくれて構わない。
お前を襲ったのは見覚えがある囚人か?」
「………」
ケンジは首を横に振った。
看守は囚人にとっての敵。
密告すれば自分に跳ね返ってくる。
ケンジはすべてNoと答え続けた。
突然、後ろから何者かに襲われた。
意識がぼんやりしていたから
何人いたかも分からない。
何回貫通されたのかも。
「そうか、分かった。
看守のロバートは
トイレで糞している間に
犯行が行われたと言っていた」
トレイシーは独り言のように残していき
病室から出て行った。