第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
医務室への病床手続きをし
大部屋ではなく個室の病床まで案内する。
悪臭を考えての考慮だ。
「このまま病気が進行すれば
最悪の場合、足を切断することになる。
検査結果を待つ間
痛みを和らげる鎮痛薬を点滴するよ」
病衣に着替えたルキノは
ベッドの上に移動して寝かされる。
とても不安げな表情だ。
バートンは採血などの結果を待ち
感染・末梢動脈病変・糖尿病性末梢神経障害、
ほかの潰瘍性疾患なのか原因を検索。
若くて中肉中背でも糖尿病という
可能性も十分に高く、
そろそろ薬が効いてくる頃だと
ケンジはルキノの病室まで顔を出した。
「痛みはどうだい?」
「……リプソンの女だったな」
ルキノに目を細められた。
ケンジは心配して損したと思いつつ
丸椅子に座った。
「女じゃなくて子分だ。
痛みのほかに痺れはあるか?」
「痺れ?」
「ピリピリ、ジンジン、チクチクするとか
表現するの難しいかな。
硬い壁を殴ったあと、
ぶつけた拳のところジンジンしない?
指を誤って扉に挟めた後とか」
「お前でも壁を殴るのか?」
「なるべく当たらないようにしてるけどね。
足はどんな感じ?」
ルキノは少し考えて
「痛すぎてサッパリだ」と頭を振った。
どうやら鎮痛剤の効果がまったく得てない。
「脂汗が出てる。
タフな男だ」
「口説いてるつもりか?」
「君もしつこいな。
いっとくがグラウンドでのキスは罰ゲームだ。
君はどうだが知らないけど
男に興味ない」
「俺は男と薬はやらねえと
ここに誓ってる」
「それは大いに賛成する。
バートン先生に痛み止め
変えてもらえないか聞いてみる。
その方がいいだろう?」
「………」
ルキノは首を縦に振らなかったが辛そうだ。
こんな時だから弱音を吐いても良いのに
立場を考えれば
警戒されてしまうのは仕方ないだろう。