第4章 疑念
これまで、
自分から惚れた女はいない。
顔がいいから女はいくらでも寄ってきて、
理想の女や家庭なんて
一切考えたことはなかった。
大学の頃の女は
大切にしていたから千恵美とも
そこそこ関係は良かったように思う。
とはいっても、
プライベートは男友達優先で遊んだり
アルバイトではじめた仕事、
体験入社やセミナーやら資格取得で
身に付けたいことが山ほどあったから
デートなんてそれこそ数える程度しかなかった。
千恵美は、
そこそこ男を立ててくれる。
責任を取ると決める前に
千恵美との時間を費やして改めて見つめ直し、
ちょうどいいと思った。
これも宿命なのかもしれない。
コンドームを着用していても、
数パーセント妊娠の可能性がある
ことは知っていた。
自分にそう納得させて、
「責任」という形で千恵美との婚約を決意。
生まれてきたときの血液型で
胸を撫で下ろしたのは、
自分の中でほとんど自己解決していたから
数日のうちに
疑念も何もかも晴れたのだった。