第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
罰ゲームのせいで
はやし立てる声が一段と強くなった。
ケンジは自分は新しい玩具なのだから
仕方ないと思ってグッと堪えた。
医務室に置いていた
囚人服に着替えようとしたが
セドリックは思わぬことを口にした。
「医務室のシャワーを使え。
移動するのも面倒だろ」
「面倒って。
今までここ使ってたのか?」
「そうだ」
何食わぬ顔して応えてきた。
ケンジはようやく
疎ましい視線から解放されると思い
セドリックの肩にグリグリと拳をあてた。
「そういうことは早く教えろよ」
「聞かれなかった」
「遠慮して言わなかった俺も馬鹿だった。
おい待て。
なんでお前も脱いでるんだ」
「女じゃあるまいし期待するな。
早くしろ」
ケンジは唖然としたが
汗を早く流したいと
渋ることもなくスクラブを脱いだ。
濡れた髪をかき上げるセドリック。
同じように腰にタオルを巻いて
中に入ると
シャワーの温度を確認する。
「こっちの方が温かい。
ずっと独り占めしてたのかよ」
「そこの椅子に座れ」
「え、なに?」
「頑張ったご褒美だ」
「ご褒美? 俺なにかした?」
「頭洗ってやる」
罰ゲームのようなことじゃないらしく
大人しくシャワーチェアに腰を下ろすことに。
濡れた頭髪にセドリックの
大きな手が包み込み
ちょうど良い力加減で頭を洗ってくれる。
セドリックといると気分がいい。
揶揄われるのは不本意だが、
隣りにいると
力の強い囚人たちより
自分が勝っているように思えるからだ。
時間が経てば
口笛を鳴らす奴が少なくなって
本来の男としての自分に戻っていける気がする。