第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
目の前にいるセドリックとの真剣勝負。
油断してたからとはいえ
寝技のときのあの素早さ。
それに相手は元軍人。
バランスの良い筋肉は飾りじゃなく
体力は常人より遥かに上。
ケンジは真っ向勝負は危険だと考え
頭脳プレイで勝負にかけた。
3ポイントラインを狙っていると匂わせ
一気にフリースローラインまで持って行きシュート。
リングに綺麗に入ってまずは1ポイント先取だ。
「よしっ」
「動きがしなやかだった。
見てみろ」
意外な組み合わせだったからなのか
それともただの暇を持て余していただけなのか。
気が付いたら向こう側から拍手してきて
応援してくれる観客が囚人でも
部活の日々を思い出して
俄然やる気が湧き上がってきた。
「賭け事しないか?」
「無駄遣いはしたくない」
「金は賭けない。
勝ったら負けた奴に罰ゲームをさせる」
「何でも言っていいのか?
子分なのに」
「ああ。俺に勝てる自信があるならな」
ケンジはう~んと悩んで考えた。
実はもう答えは決まってる。
こんなに観客が集まって来てるんだ。
セドリックが絶対言わなそうなことを
大声で言わせてやりたい。
絶対にみんな大爆笑する。
ケンジは勝つ気満々で人差し指を立てた。
「いいぜ。その賭けに乗った!」
しかしそれがセドリックの思う壺だった。
前半まではいい勝負だったのだが
後半からボールを弾かれたり
高い打点を活かされて
反撃できなくなってしまう。
久々の激しい運動に汗が流れる。
息が切れる。
筋肉が踊っている。
でも楽しかった。
スポーツはやっぱりいい。
真剣勝負のセドリックも時折
控えめな白い歯をみせ、
不意に胸がドキッと跳ねてしまった。