第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
セドリックの苦手なものは冷凍人参。
今まで一人で黙々と食べ
皿の隅に残った人参たちを思い出すと
さらに可笑しくなってしまう。
可愛げなところも探せばあるものだ。
あんまり笑いすぎてたら
いい加減にしろと
セドリックに足を蹴られた。
看守が睨んでいることに気が付き
残した人参を食べてやってから席を立った。
「バスケは得意か?」
「急になんだよ」
「得意かと聞いている」
「得意っていうか部活に入ってた。
ポジションも知りたい?」
「点呼が終わったらグラウンドに出よう。
部屋の前で待っていろ」
「セドリックの部屋を教えてくれよ。
俺と同じ2階?」
「知らなくていい」
「別に押し掛けないよっ」
人の部屋番号はチェックしている癖に
意地悪な奴だとケンジは思った。
食堂を出たら16時の点呼まで待機。
部屋の中にはコーギーがいて
気まずい雰囲気が漂った。
「随分セドリックと
打ち付けてるみたいだね」
「おかげさまで」
ケンジは分かりやすく
愛想のない態度をとった。
弱いもの同士という
共通点を利用し
近寄られたのが許せなかったからだ。
「セドリックの女になれて良かったね」
コーギーの冷やかしだと
分かっていても
馬鹿にされたような言い方に
ケンジはピキッと目くじらを立てた。