第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
「俺は駆られる立場の人間だと
理解しているつもりだ。
だけど誰の女にもならない。
体を要求しないなら
この俺を、弟子か子分にしろ!」
「力量を弁えているのは褒めてやる。
だが誰もお前が
女に見えてるわけじゃない」
「そんなのは当たり前だ。
誰かの女っていう呼び方が癇に障る」
「呼び方なんてどうでもいいだろ」
「どうでもいいなら弟子に譲れ。
あと腕が痺れてきた。
セドリックが寝技得意なのは
分かったから、そろそろ…」
「………」
そういうとあっさり解放してくれた。
流石はトロールの首を
激闘の末、へし折っただけの猛者だ。
格闘技に通じているのは身を通じて納得した。
「養成所出身か?」
「元軍人だ」
「なるほど。
それで俺は弟子にしてくれるのか?」
「弟子にするには貧弱だ。
子分でいい」
「では親分。次は何を致しましょう?」
「……馬鹿にするなよ」
遠回しだが今まで通り
名前で呼んでもいいってことだ。
ケンジはそう解釈して満足そうに頬を緩めた。
「──…バートン先生。
この本読んでもいいですか?」
その場で別れたセドリックに
15時の食事時間になったら勝手に行くなよ
と念を押した。
一緒に行動さえすれば忽ち噂になる。
やることがなくなって
医務室をウロウロしていたら
ボロだけど医学書を見つけた。