第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
コーギーは牧師によって人格を狂わされた。
性的虐待から逆境体験が
圧倒的に弱い立場の相手を支配したい、
征服したい、
優越感を感じたいという欲求が
いまの姿を露わにした。
「……お前は可哀想なやつだ」
「同情してくれるのかい?
仲間になろうよ」
「お前のような奴に情なんてない。
失せろ」
警告したのに
止めることを選ばなかった
コーギーを許すことはできなかった。
これ以上、奴の溜まり場にいられないと
ケンジは泡に体が残ったまま
服に着替えて出て行ったのであった。
「くそっ、看守もグルなのか。
ペドフィリアだと
最初から分かっていたはずだろッ」
コーギーの罪状は分からないが
きっと奴は性犯罪者だ。
元警察や性犯罪者、
女性や子供に暴力を振るった囚人は
他の囚人たちから容赦ない制裁を受けると聞く。
なのにあいつは賢く生きている。
7年もの歳月を監房でのうのうと暮らしている。
コーギーの対象は女じゃない。
自分より立場が弱く幼ければ良いのだ。
児童の代わりとして
髭を剃って童顔にみえたケンジに牙を剥く。
「なんで俺だけこんな目に……」
監房を移動したい。
看守に状況を説明しても右から左だろう。
看守は問題ごとを嫌っているはず。
しかし逃げても所詮は檻の中。
戦う腕っぷしもない。
そんな時、一人の男が思い浮かんだ。
(あいつなら……)
ケンジは藁にも縋る思いで医務室へ向かった。