第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
「──ケンジ。医務室は危険だ。
近付かない方がいい」
監房に戻ってから
コーギーが頑なに反対してきた。
何か嫌な過去でもあったのだろうか。
拒む理由を尋ねたが
納得できる回答が返ってこなかった。
ベッドに座るなり、
ケンジは仕方なしにもっともらしい理屈を出した。
「想像を絶する場所なら当日辞めて、
別のところを探す。
コーギーは何をしているんだ?」
「僕は洗濯工場で働いている。
地下に大型の洗濯機や乾燥機があって
布団の打ち直し、官物の管理をしているんだ。
僕の顔が効くから絶対こっちの方が楽なのに」
「たしかに魅力的な誘いだ。
コーギーが同房でよかったと改めて思う日がくるかも」
そう言うとコーギーは嬉しそうに微笑んだ。
16時の点呼が終わり、
コーギーに刑務所内を案内してもらうことに。
中枢管理棟のスペースには
医務室ほかに看守の詰め所や売店がある。
共有スペースにはグラウンド、
シャワー室、図書室、大きい娯楽室から
小さい娯楽室まであると教えてくれた。
ちなみにテレビやDVDも見放題らしい。
「中には囚人が仕切っていて
物を借りるにもお金が掛かる。
使いたいものがあれば
誰に頼んだらいいのか僕が教えてあげるよ」
「図書室は?」
「お金はかからない。
図書室は変人扱いされる囚人か
模範囚が多い場所だ。
一人で行く分には危険は少ない場所さ」
警戒心を無くして
歩き回るのは無謀というものだ。
肝に銘じておこう。
ケンジは明日早速から
医務室に出向いてみることにした。