第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
端整な顔立ち。
横から覗く青い瞳に吸い込まれるように
無意識に留めてしまう。
「彼はセドリック・リプソン。
半年前にここにやって来て
ここで彼に喧嘩を売る囚人はいない」
「なぜ?」
ケンジは食いつき気味に首を傾げた。
「半年前、ポルコっていう
トロールみたいなオベシティがいたんだ。
そいつはみんなの嫌われものでね。
ポルコはセドリックの尻をしつこく狙っていた。
誰もが時間の問題だと思った。
痺れを切らしたポルコは
風呂場で襲いかかったんだけど
逆に首をへし折られて殺されてしまったんだ。
風呂場で転んで死んだってことになってるけど
みんな彼がやったって知っている。
ギャングの間でも手を焼いていて
二倍以上もあった相手を
素手だけで倒すなんてかなりの腕っぷしさ」
クールな見た目以上に屈強な強さ。
ケンジの憧れるような瞳でセドリックをみた。
新人や若くて小綺麗な男は
女の代用品としてケツを狙われる。
同じ男であっても
鬱憤を晴らすには丁度いい獲物なのだ。
セドリックは20歳を少し過ぎた
落ち着いた年齢にみえる。
その周りには会話する相手もいなければ、
声を掛ける連中もまるでいない。
群れから外れた気高き一匹狼のように思えた。