第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
30分だけでも寝た気分になれた。
頭のなかがスッキリしている。
判決を言い渡されるのがずっと怖かった。
待っている間、
生きた心地もしなければ眠れた気もしなかった。
「顔色が少し良くなったね。
食事が来たから取りに行こう」
優しく肩を叩いてきたコーギーに起こされ
小さな鏡のある
洗面台の前で顔を洗う。
久々に自分の容姿をみた。
目の下のクマ。
少しやせ細ったように見える。
覇気が全く感じられない。
身なりに気を遣っていたから
自分の髭面なんていうのは久しぶり。
「点呼が終わったら刑務所内を案内するよ」
「ありがとう。少し歩き回りたい」
食事はブロック内で配られるようだ。
配膳係からトレイを受け取り
空いた適当な席に座る。
(動物園の臭いよりマシだな……)
すれ違う人の群れ。
人間はニオイに敏感だ。
屁や便臭、異臭騒ぎで一般社会でも
乱闘が発生するほどであり
この刑務所内でも
適応されているようだ。
味気ない食事を
掻き込むように食べる囚人たち。
看守は常にウロウロしていたり
壁際に立っていたりと
目を凝らしている。
食事の場でも気は抜けないらしい。
その中には中年の女性看守のほかに
若い女性看守も
毅然とした態度で立っていたことに
ケンジは驚いてしまった。