第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
「──…ケンジ、どうしたの?
気分が悪い?」
目の前に見慣れない顔があって
ケンジは首を引っ込めた。
あたりを見回して
自分の恰好をみて再認識する。
すでに裁判に負けた最果ての場所なのだと。
「……ああいや、頭が重くて」
「夕食まで時間があるし
長旅で疲れたんだろう。
横になってよ」
「何時になる?」
「いまは14時頃だから30分は眠れるね。
15時から夕食タイムだ」
「随分早いんだな」
「16時に点呼があるよ。
看守にとってはついでみたいなものさ。
点呼はその1回のみ。
起床時6時45分~消灯21時までは
基本的に自由時間なんだ」
「朝と昼の食事は?」
「食事は1日2回。
食事前にロックダウンなんて起こったら最悪さ。
看守に告げ口なんてものは以ての外。
囚人たちにバレたら
明日まで命はない」
「囚人たちにとっては看守が敵か……。
なるほどな」
常識人として過ごしてきても
看守は味方ではない。
むしろ味方なんていやしない。
だから囚人同士で仲間を作る。
ここは法律もない
暴力やレイプ、ドラッグが横行する無法地帯。
「時間になったら起こすよ。
それまでゆっくりおやすみ」
「恩に着る」
ケンジは上のベッドに上がって布団をかけた。
寝顔を見られたくなくて壁を向いた。
マットレスが固い。
ごわごわなタオルケットの手触り。
枕の形も馴染まない。
ベッドの幅も狭くて窮屈に感じられる。
けれど拘置所よりマシな環境だと思った。
ケットをかぶって瞼を閉じれば、
次第にどっと疲れた眠りが襲ってきた。