第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
チェイスと親しくなるうちに
普段誰にも言えなかったことを色々話した。
例えば家族のこと。
ケンジは日本で生まれ育ち、両親も日本人。
しかし今ともに過ごしているのは
メキシコ系アメリカ人である
茶色い肌をした兄と母、そして妹。
ケンジの実母は
ケンジを産んでから間もなく経って病死。
父とともに4歳の頃にアメリカに来て
そのまま永住権を取得した。
義母であるミーシアは父の職場で出会い、
彼女は同じメキシコ系アメリカ人との間に生まれた
ケンジとは5歳年の離れた
ジェイクを一人で育てていた。
なんでも前の夫は
酒やギャンブル癖が悪いどうにもならない奴で
事あるごとに暴力を振るっていた。
身の危険を感じて離婚して決別。
姉を頼ってカリフォルニア州に移住し、
ケンジの父と巡り合うことになった。
ミーシアは父の奥ゆかしい優しさに惹かれ、
父もミーシアの身や心の美しさに惚れて
再婚を果たした。
そんな二人のあいだに産まれたのが妹のリリー。
日本人とラティーノの血をわけた
愛らしい顔つきで、
その容姿は美人のミーシア似。
性格は素直で明るい女の子だ。
そしてチェイスもまた
義家族だったことを明かした。
チェイスの血縁問題ではなく
兄のラルフが養子縁組だったこと。
チェイスの両親は長年、
子どもが生まれなくて苦しんでいたのだ。
ラルフは兄として人として
とても良くしてくれるため兄弟仲は良好。
幾分、ケンジとジェイクのように
年が離れていたため
喧嘩やオモチャの取り合いもすることはなく
怒られたことが一度もないと
少し寂しそうな顔をしながら話してくれた。