第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
──…雲の隙間から見えてきた太陽。
黒い瞳を細めて前髪が少しだけ靡くと、
キャンパスがみえる草っぱらに
ドサッと横に座る筋肉質の体に目を向けた。
「ケンジ。また彼女に振られたのか」
「振られてない。振ったんだ」
「女には常にタフで優しくしなきゃ。
教えたろ?
なにを言った?」
チェイスは揶揄おうと意気込んでいるのか
顔のニヤつきを隠せていない。
本命じゃないから未だしも
親友が女に振られて
(実際はこちらが振ったのだが)
面白がられるのは気に食わない。
「その気がないのなら
部屋に上がらないでって思いきりビンタされた」
「手を出さなかったのか?」
「俺はお前じゃない。
メリッサはたしかに可愛い子だけど
中身がモンスターなのは御免だ」
「元気出せって。
今度、俺がとびきり可愛い子
紹介してやるよ」
「余計なお世話だ」
チェイスは少し赤く腫れた
ケンジの頬を揶揄うように擦ってきた。
猫の引っかき傷のようにできた痕。
「今日、俺の家に来いよ。
パーティーしよう」
「そこまで落ち込んでない。
今日出されたレポートを片付けたいんだ。
手伝ってくれるなら行くけど?」
「そうだな。
俺もそう思ってた」
チェイスは容姿や運動神経にも優れ
女にも優しく、
家がお金持ちなので
常に余裕がある振る舞いだ。
だから女も途切れたことがないほど
モテまくる。
ケンジとチェイスは初めから
親しい関係ではなかった。
家が近所でも
存在だけ知るような距離感で
グループも違えば交流することもなかった。