第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
鉄格子越しの狭い二人部屋。
部屋の半分を占める二段ベッド。
外から丸見えの位置にあるトイレと洗面所。
ゴミ箱や備え付けの棚のほか
奥には取り付けられたテーブルがあったが
日の出を知らせてくれる窓はなかった。
「君の名前は?
僕はコーギー・マクミラン」
荷物を下ろすと
コーギーは自分の横に座るように叩いた。
コーギーは態度からみるに親切そうな奴だった。
しかし、いくら見た目や態度、
口調が穏やかだろうが相手は実刑をくらった凶悪犯。
腹の内になにを秘めているか分からない以上、
強い警戒心を募らせながらも
ケンジは一刻もはやく
味方を作りたい気持ちが勝っていた。
「ケンジ・ニイヤマ」
「ケンジか。いい名前だ。
刑務所暮らしは初めて?」
「ああ」
「僕はここに来て7年近くになる。
ケンジは肌はここでは珍しい。
国はどこ?」
「日本」
「へえ~、日本人は初めだ。
Aブロックにアジア人はいるけど
日本人は聞いたことがない。
なにをしたの?」
「……」
「ごめん。言いづらいよね。
話題を変えよう。
ケンジと仲良くなりたいんだ。
洗礼を受けたことは?」
今日その日あった奴に
罪状なんて軽々しく口にする気にもならない。
ケンジはコーギーの胸元に目をやると
キラリと光る
十字架のネックレスが飾られていた。