第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
身体検査が終わると
シャワーを浴びるように指示された。
久々の水浴びだとはいえ
温かさもなく、
洗礼のように冷たい真水を頭から浴びる。
ホースでの水浴びを回避できたことは
幸いだと思った。
「囚人服に着替えろ」
ここで生活していくためのお揃いの衣装。
用意されたオレンジ色の囚人服。
背中にはデカデカと
サバクト群刑務所のロゴが入っている。
黒い下着と
白いTシャツと靴下。
黒いマジックテープのスニーカーを履き
シーツや茶色のタオルケットなど
支給品を渡される。
「ケンジ・ニイヤマ。
お前の入る監房はBブロックの2階だ。
ついて来い」
看守部長と思われるバッチをつけた
トレイシーは今晩から
寝泊まりする監房へ続く廊下を進む。
この扉の先に凶悪犯たちの巣窟がある。
最後の扉の前に立つと
透明のガラス越しからみえる
同じ衣装をきた物々しい囚人たちの姿。
「よう。新入りか?」
「どっから来た?」
「乳臭い顔だ」
「随分若いな。いくつだ?」
「好みだ」
物騒とも受け取れる
囚人たちの罵声。
獄中慣れした奴らがみれば
新入りのケンジは獲物そのもの。
足が竦んで何度も立ち止まりそうになる。
(俺は……
今日からここで……)
想像はしていた。
けれどあくまで想像だった。
身をもって感じる。
心臓の鼓動は勢いを増して
拒絶するように
鳥肌が立つ。
駆られる者としての本能が目覚めた。