第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
門の前で武装した看守たち。
「ようこそ! サバクト刑務所へ!」
整列した受刑者たちの前で
軍人装いの口髭の看守に
歓迎とも思われる言葉を吐かれたが
そこから続いたのは命の保証などない警告文。
看守のいうことは絶対。
塀の中ではどんな奴だろうと
地位も権力も尊厳もすべては無意味。
反抗的な態度や
命令に逆らえば
厳しい罰を与えられ、
もしくは銃で撃たれるという。
看守に言い放たれると
追い立てられるように建物の中に入れと命令され、
手錠と足枷をはめられたケイジたちは
ゾロゾロと重たい足を進めた。
「無駄口を叩くなよ。
見張っているからな」
ブースに移動させられたケイジたちは
部屋決めのため
一人ずつ適当なナンバーで呼ばれ、
ブース内の受刑者たちが徐々に減っていく。
「ナンバー08、出ろ」
ケンジが付けていたナンバーネームが呼ばれ、
青い一線上に沿って歩くように
命令される。
すべては看守が絶対。
真っ白なスニーカー。
身の丈に合った青色の濃いストレートデニム。
体のラインが出過ぎない
肩幅ちょっとの大きめの白のTシャツ。
見た目こそラフでは清楚な装い。
セットされていない真っ黒な前髪。
口横と顎に密度のない薄い無精髭。
品のある中性的顔立ちのため
髭のせいで鬱陶しい見栄えである。
「名前は?」
「ケンジ・ニイヤマ」
「なんの罪で?」
黒人の看守は淡々とした質問を繰り返し、
やつれた表情のケンジは
「murder」
と目の色を変えずに答えた。