第31章 加速
気になってたんだ、
って何がだよ。
なんで触ってくるんだよ。
なに見てんだよ。
俺のことなんてほっといてくれよ。
「な…、んの、つも…り…」
性的なことが脳内を駆け巡った。
動いた映像ではなく
静止した画像が
次から次へと流れ込む。
咥えろと差し出された指。
口を開くと瞬く間に入ってきて
氷のようにヒンヤリとした指先を感じ、
舌がすくわれて
遊ぶように唾液を掻き混ぜられる。
くちゅくちゅと
いやらしく掻き回されるたびに
俺の舌も答えるように動く。
冷たい視線も
そればっかりは熱線があって、
指を食べてるのは俺の方なのに
食われたような気分になる。
にやっと主任が性的笑みを浮かべると同時に
現実に引き戻され、
そこには片眉を寄せる
クールな顔つきの牛垣主任。
「きゅ、急に、そ、そんなこと…っ」
気になってたんだ、
ってこの二人きりの状況で
期待させない方がおかしい。
髪とか触ってくるとか
卑怯にもほどがある。
そして半ば呆れたような
色っぽい溜息まじりの声とともに
牛垣主任は自分の胸ポケットに手を入れた。