第31章 加速
結婚してもなお、
数多くの女性を虜にし続ける牛垣主任は
どんなモノを隠し持っているのだろう。
きっと中途半端なモノじゃない気がする。
そう思えざる得ない。
だって一時期、
五人くらいの女性と
同時に付き合ってたんだ。
それだけで普通のナニじゃないって思わせる。
それともそれ以外の
テクニックがすごいのか?
声とか妙に色っぽいし
女性扱いに慣れているだろうし
あの映画のキスシーンとかヤバかったし
テレビや映画館で見たときより
いい身体していそうだし…
って俺は職場でなにを考えてる。
しかも便所で。
考えるなって傍から
立ち上がるようなことをするな。
キスよりやばいだろ。
もし見られたら取り返しがつかない。
(沈めろ……沈めろ…)
どうにかして
硬く立ち上がりそうなモノを抑え込み、
何事もなかったように用を済ませる。
手を洗って早く出よう。
この人に、
感じたくなってしまう前に。
「っ…」
それなのに。
なんなんだこの人。
足早に立ち去りたいのをよそ目に
触れたいと思っていたその指先が
俺に触れる距離まで
伸びてきていた。