第30章 注目の的
仕事が終わると、
次に待ち構えていたのは俺の歓迎会。
牛垣主任と
その部下を連れてやって来たのは
個人経営の小さな居酒屋店。
ここからそう遠くない所に駅もある。
「牛垣くん、いらっしゃーい!
準備はバッチリですよ。
お飲み物決まりましたら教えてくださいね」
「ご主人、ご無沙汰しております。
少々ご無理をいって申し訳ございません」
「いやいや。牛垣くんのおかげで
うちも商売繁盛だからね!
毎日やりがいがあるよ。
…んで、鹿又くん。
例のあれ仕込んだんだけど
今日も食べてくかい?」
「ええ。お願いします」
鹿又さんはどうやら
この中で一番の常連客らしい。
料理もお酒も美味しくて、
牛垣主任の幅広い人脈もあるから
かなり融通が効くとのこと。
「……皆さん。
最初はビールじゃないんですね」
「だからかなり融通効くって言ったろ。
まあそれだけじゃないけどな。
あとお前だけだぞ、
飲み物決まってないの」
「じゃあ、ウーロン茶で」
「え。おまえ下戸?
まあいいや。
すみませ~ん。注文お願いしまーす」
隣りに座っていた鹿又が
手を上げて店員を呼ぶ。
もうすでに店の中は騒がしい。
それもそのはず。
牛垣主任の周りが
熱心に口を開いているからだ。