第30章 注目の的
俺は目立つことが嫌いだ。
それでいて
コミュニケーションをこじらせている。
長瀬といた時も
目立つ奴だから本当は
最も距離を置きたい人間だったが
好きになって
苦手ものとも受け入れてしまった。
「地方に飛ばされた方がまだマシだったかも」
生まれ育った土地から出て行く不安もある
が、しかし。
辞めろと言わんばかりな環境。
一体誰がこんな部署に決めたんだ。
人事課の誰が絡んでいる。
副社長に感謝し恩返ししたい思いも薄れ、
この状況じゃ逆恨みしてしまいそうだ。
…けれど分かってる。
すべては自業自得だって。
長瀬と付き合った時点で間違い。
いや、
それ以前に惹かれたことによる過ち。
ゲイである自分の性質。
夢を手にするまで、
俺はゲイだと周りにバレず
生き抜くことができるのだろうか。
また橋爪先生に会ったら…?
それとも上にバラしたどこぞの人間が
今度は金をゆするため
証拠写真とか撮っていて、
接触してくるかもしれない。
職場キスの一連で
俺だけの転社でコトはおさまったが
本当は終わってないのかもしれない。
俺がこの会社に居続ける限り続く。
けれど、逃れて
本当に…それでいいんだろうか。