第30章 注目の的
ようやく昼休憩になり
とにかく居心地が悪い会社を出て、
目についた食事処に入った。
「はぁ゛~…」
腰を下ろした途端、
溜息とともに突っ伏してしまいたかった。
どうしてこんなに疲れているかって?
初日出勤だとか
そういうレベルではない疲労感。
あの空間はプレッシャーが強い。
とにかく気が抜けない。
「あの人は常に平然としてるし…」
あの人とは牛垣主任のことだ。
どこへ行っても視線を向けられる。
どこへ行っても声を掛けられる。
どこへ行っても注目されている。
俺のときはとことん無表情だったのに
会社の人と話すときは
柔らかい表情を自然に披露する。
テレビで見ていた時みたいに爽やかになるのだ。
並んで歩いたときには特に地獄だった。
毎日毎日こんな日が続くと思うと気が重い。
常に監視されている状況。
もと芸能人だから
ああいった
クールな態度でいられるのだろうか。
それとも単にナルシスト、
目立ちたがりの性質なのか。
後者なら構いやしない。
常人の神経なら
ストレスで気が狂ってしまいそうだ。
毎日顔を合わせている会社でさえこの状況。
あんな状況じゃ
プライベートだってないのに等しい。