第29章 もう恋なんて
土曜日になっても日曜日になっても
長瀬からの連絡はなく、
返信がくることを信じて
普段どおりの生活を心がけた。
そしたら、月曜日がやってきていた。
「…はは。ひどい顔」
ひどくやるせない顔。
目の下にできた隈。
普段どおりを心掛けていたはずなのに。
なにを食べたのかも思い出せなくて。
なにをやったのかも思い出せなくて。
ホント、だめだめだ。
結局、長瀬からの連絡は来なかった。
今日だって会社に行くかどうかも悩んだが
出社することにした。
からっぽの胃袋のなかに
なにかおさめようと
買い溜めしておいた残り1つの
エナジーゼリーを流し込む。
「…長瀬と直接話そう」
連絡が来なかっただけで
諦めるのは早過ぎる。
携帯が水没したり
没収されたり
トラブルに遭った可能性だって
あるかもしれないし。
ここまま終わりになんてしたくない。
終わらせるならちゃんと形にしたい。
そう思うのは
当然のことだろう。
会社に噂が広まっていなければいいと願うばかり。
いつも長瀬と行動していたから
急に態度を改めるのも変な話だろう。
会社についたら長瀬の出方を伺おう。
そもそも俺なんて影が薄かったら
そこまでなんだけど。
たどり着いた会社のビルを見上げ、
小さく息を整えて
前へと踏み出した。