第29章 もう恋なんて
自宅から帰ってから
長瀬からの連絡を待ってみたものの
いっさい音沙汰なし。
空いた時間に
辞職届を書いたり、
気晴らしにお風呂に入ったりしてみた。
「……、」
けれどなにも返って来ない。
今後一切関わるなと言われただけで
こうもあっさりと
連絡が取れなくなるものなのか。
約束していたテーマパークは
中止になるのは当然だが
休みが明ければ
会社で顔を合わせるわけだし、
ああしようとかこうしようとか
何かあってもいいのに。
「このまま…終わるのか?」
ただ携帯画面を眺め、
明かりをつけた部屋でぼーっと
長瀬からの着信を待つ。
「……」
連絡はいつも長瀬からだった。
俺はいつも暇だったから
人気者の長瀬の予定に合わせようと
常に連絡を待って受け身ばかりの返事をする。
いつの間にか時計は深夜をまわっていて、
携帯画面は振るえもしない。
「長瀬……」
気付いたときには
意識を落とし、
寝落ちしていた。