第28章 職場キス
頭では分かってる。
分かっていたけど
軽いキスだけで終わるはずもなかった。
つけ合わさった唇。
この時ばかりは時間と場所を忘れ
ただひたすら
注がれるねっとりとしたキスに溺れて
ひとときの熱くて恋しい濃厚なキスを交わす。
「ん、ふは…」
降り注ぐ長瀬のキスに応じるだけでなく、
自分からも
背筋を伸ばして積極的に応じる。
……でもここは職場だ。
誰かに見られたらまずいと
長瀬の胸板に手を置き、
名残り惜しいけれどゆっくりと離していく。
「…じゃ!昼休みにな」
「おう」
さっきの熱っぽい顔が嘘のように
爽やかな笑みを浮かべた
長瀬は給湯室から出て行った。
残された俺は
熱をあてられた唇を
思い出すように撫でる。
「…、…」
仕事が終わっても長瀬と会えるだろうか。
またキスしたい。
さっきの続きがしたい。
そんなうつつを引きずらないように
いま一度気合いを入れ、
デスクに戻った。
しかし、
長瀬とのランチタイムが終わって
ロビーを歩いていた頃、
俺と長瀬は
物々しい表情をした
課長に呼び出されたのであった。