第28章 職場キス
デート相手の長瀬に相談するのも
どうなんだと思い、
結局一人で悩む。
とりあえず雑誌を立ち読みして
情報を得てから
ショップへ寄ることに決めた。
「みーなと。なに怖い顔してんだ?」
「…俺…、そんな顔してた?」
「怖いっつーか悩んでる?みたいな。
どうしたのかな~って」
給湯室でコーヒーを入れていると
ひょっこり長瀬が顔を出した。
「別に…大したことじゃないんだけど。
着ていく服、どうしようかなって…」
「あはは。そっか~。
湊はファッションに無縁だったもんな。
俺は気に入ったブランドで
決めちゃうことが多いけどさ。
店員さんに聞くのも一つの手だと思うぞ?」
「聞くって…恥ずかしいだろ。
俺は雑誌読んで決めることにしたんだ」
ただでさえコミュ障をこじらせている。
人付き合いが苦手な俺の気持ちを
分かってくれない長瀬に対して
ちょっと頬を膨らませると、
「ミナト」
ちゅ。
顔を傾けて、
いきなりキスをしてきた。
「ちょっ、ここ…職場…っ」
「いま無性にシたくなった。
こんなに近くに居るのに拷問だと思わね?」
「ん、…」
ちゅ…と唇を吸い上げてくる長瀬。
さっきは自分から離れてしまったけど。
熱が離れていくと恋しくて、
ぎゅっと長瀬の裾を掴む。
こんなところでシたら危ないのに。
誰かに見られるかもしれないのに。
長瀬の真っすぐな熱を、いますぐ注いで欲しくて。