第28章 職場キス
あと1日経てば待ちにまった土曜日。
うちの会社の土曜日は
完全休日ではなく
隔週で休日となっている仕組み。
(そういや着ていく服、
まだ決めてなかった)
キーボードを打ち込みながら
ふとそんなことを思い出す。
長瀬のことだから
きっとオシャレな格好良い服を着てくるのだろう。
俺の衣装タンスは
ほとんど黒か白のもので、
組み合わせも毎回決まってる。
(服。新調に行こうかな…)
仕事を進めつつ、
男性ファッション雑誌から参考を得ようと
20代向けの雑誌を端末で調べる。
(女子とデートする訳じゃないし、
相手は男の長瀬…。
モテ服着てもどうなんだって感じだ。
なにが良いのかさっぱり…。
まだ寒いからパーカーとジャケット着て…
んー。コートの方がいいのかな)
お金を貯めて
海外に行くつもりだったから
私物を増やさないように暮らしていた。
唯一の出費というなら、
会社の質を落とさないために
年収にあった質のいい
スーツや靴を選んでいたくらい。
ただし、私服はこだわりなく年中着回し。
毛玉やシワだらけでも
お構いなしだった。
「~~…」
「どうした? 積んでるのか?」
「えっ、あ、いえ…大丈夫です」
横に座っていた先輩にうなった声を聞かれ、
慌てて仕事とは関係ない画面を閉じた。