第25章 一度だけ *
体重が加わるたびに
じゃりっとした口当たり。
毛を巻き込まないように咥えて
唇をすぼめ、
鼻から息を吐き出す。
「どうだい?先生のちんぽの味は…?」
「…お、おいひいです…」
「そうだよなぁ角。
先生の大好きなんだもんなぁ?
初めて咥えたとは思えないくらい
いやらしい口だぞ」
「ありがとう、ございまひゅ…っん」
本当は嘘。
初めての味はすごく苦かった。
少しでも先生に喜んでほしいと思った。
ゴムを外したばかりのものを
咥え込んだから、
これが男の人の精液の味だって知った。
(ドブのような…
いや。すさまじく吐きけが……)
先生のは逞しいほど
大きいわけじゃないから、
簡単に口の中におさまった。
ただ苦みや渋みの強い
腐ったようなニオイに耐えながら、
現実味のあるSEXというものを記憶する。
二回目も先生は乱暴に腰を突き動かし、
俺は先生にされて
嬉しいはずなのにイケなくて
今度は自分で扱いて射精を果たす。
「──…男でも案外イケるもんだな~。
今日は遅くまで付き合わせちゃったね。
その詫びして電車賃をやるよ。
ああそれと、
分かってると思うけど誰にも話すなよ?
当たり前のことだけどさ。
それに一回やっただけで勘違いされても困る。
発情した目も金輪際禁止だぞ?」
「……はい。
先生…今日は、
本当にありがとうございました」
乱れたベッドシーツ。
なんの液体だがわからないベッドの染み。
ゴミ箱に捨てられた残骸。
やることだけやった先生は
満足したような笑みを浮かべていた。
家から追い出すように持たされた電車賃をにぎり
先生の家から一礼して出て行った。
「……」
大好きな先生とのSEX。
最後にキスしてくれれば
なにか変わったのかもしれない。
けれど想像していたSEXとは
心も身体もまるで異なっていて、
なにかを失ったような初SEXを終えたのだった。