第25章 一度だけ *
自分だけが気まずくなって、
それからまもなくして塾を辞めた。
あれから約8年。
長瀬に心を動かされつつあった日、
以前俺の心の大半を占めていた
先生とカフェの前で再会した。
「どうしたんだい?暗いな~角。
そんなんじゃお友達も
一緒にいて楽しくないだろう。ねえ?」
「まあたしかに角は見た目通り
暗いやつっすけど、
一緒にいて楽しくないワケじゃないですよ」
「!…」
何も言えない俺に
長瀬は
先生が放った言葉を否定してくれる。
「先生はお忙しそうですよね。
俺たち寒くて寒くて、
これからカフェで
のんびりしようと思ってた所なんです。
またお時間あったらお話しましょーよ」
にっこりと笑顔を崩さない長瀬。
俺が先生と再会した気まずさに
気付いてくれたのだろうか。
とても心強く感じてしまう。
この優しさをどう処理すればいい。
こんな優しさは俺は知らない。
ずっと陰にいたから。
これ以上、
好きにならない方法があったら…
誰か教えてくれ。