第24章 初デート
加害者やその家族と接触し、ほぼ行き当たりな計画を実行していく主人公。それは「殺す」という形ではない。「残す」という形で、身体的・精神的にえぐって恐怖や苦痛を与えていた。
時間も経てば警察側に追われる身になり、警戒態勢を張って接触するのも難しくなっていく。逃げ場所も後を絶たれながら闇に潜み、獲物を狩りにいった。しかし、まだ動けた加害者家族から反撃を喰らった。致命傷を負って逃亡する主人公。
背中に果物ナイフが刺さったまま雨水に体力を奪われ、ろくな食事も食べていないその体は自然に倒れ込む。その場に居合わせた女は指名手配犯だと分かっていながら看病し、自分もレイプ被害者だということを明かす。
主人公は彼女に対して答えを出さなかった。ただ自分がどれだけ子供染みていて、自分勝手なことをしているのか、自分自身がもっとも許せないと壊れた心で口にする。
彼は自分の生き様を正当化しなかった。
そんな弱った姿に匿った女は主人公に加担するように働きかけた。寄り添おうとする女だったが、女性が抱けない…という主人公は拒んだ。
雨の多い日が続き、傷が癒えていくなかで、やがて共犯者以上の気持ちを交えるようになった。
ラストは差ほど警戒されていない死刑判決の出た拘置所にまで乗り込んだ主人公。手には犯行に選んでいたハンマーの類ではなく、あの時の果物ナイフだった。
あたりは騒然とした。
少年は最後に
「おまえたち、ここへはくるな」
憐憫の目を向けていい残し、躊躇なく自害した。
しっとりとしたギター演奏からはじまり、
ロック調の曲が流れていく。
「……っ…」
呆気ない幕引きだったが憎むべき相手がこの世に残り、彼が生きていくには残酷な世界だったのだろう。
歌詞はすべて英語で歌われていて、ほかの人を愛してほしい、嫌われる前に僕は去るからとガールフレンドに対する曲だ。それは最初の彼女に対してか、あるいは看病してくれた彼女に対してか。
予告でサビの部分を何度も耳にしていたのに物語りを知って、さらに揺さぶりを語りかけてくる。
本当はたくさんの愛情に満ちていて
血で汚れてしまった少年を
洗い流すように
ボロボロと止まらない涙が溢れ出した。